【第五話】 ニュースワイドの時間です。

暗い玄関を開けた、その音が大きく聞こえる。誰も迎えには来てくれない。 窓から見える東京タワー。今日もライトは消えている。 もうしばらくライトが点いた東京タワーを見ていない。 旅行のときに眺めた東京タワーはキラキラと輝いていて、ただ見ているだけで幸せな気持ちになった。両親からは「何が楽しいの?」と言われたが東京タワーは格別なものだった。だが、今の愛は東京タワーを見ても何も感じない。

番組終了まであと3ヶ月。 番組が終わってしまったら私はどうすればいいの……。 携帯を取り出し、電話をかける。こんな時に弱音を吐ける相手は母しかいない。 「もしもし? あ、お母さん元気? ちょっと今日辛いことがあって」 「どうしたとね? 話してごらん」 その暖かい言葉に涙が溢れてくる……。 「……福岡に帰りたい」 「急にどうしたと? あ、そうだ、あなたが好いとう十二堂えとやの梅の実ひじきと山椒じゃこひじきば送っといたけんね。それから結婚できるように恋木神社のお守りも一緒に入れといたけん。もしもし? 愛……?」 「お母さん、ごめん……」 やっぱり電話をしなければよかった。 心の奥底に閉じ込めてきた感情が一気に吹き出しそうだった。ここで弱音を吐いたら全部がダメになる。もう東京で頑張れなくなる。番組を降ろされることは母には言わず、電話を切った。そのままソファに倒れこむと、涙が止まらない。一人で泣くしかなかった。どれくらい泣き続けただろうか、大学時代の楽しい時期を思い出した。 大学2年生の時、食堂でご飯を食べていると広告研究会の先輩に「ミスコンに出てみない?」と声をかけられ、人生は大きく変わった。自信は全くなかったけれど、せっかくだから大学時代の思い出にとミスコンに出場した。将来のことなど考えてもいなかった。結果はグランプリを受賞。その副賞として地元のテレビ局へお天気キャスターとしての出演が決まっていた。あの頃は右も左もわからずただただ流れに身を任せることで精一杯だった。お天気の原稿を何度も何度も下読みし、間違えないように一文字一文字丁寧に読むように心がけた。放送中のことは記憶がないくらい緊張していた。そんな中でも凄く充実していたし、キャスターとしての自覚も少しずつ芽生えてきた。

「テレビ局のアナウンサーになりたい」 キー局のアナウンサー1本に絞って就活をしたけれど、そんなに甘いものではなかった。惜しいところまでいったテレビ局もあったけれど、あと一歩のところで採用はされなかった。そんな時今の事務所を紹介され、東京でこの仕事を始めた。私を落としたテレビ局を見返す。受かった子達も見返してやる。フリーでも頂点まで行けることを見せつけてやる。そんな気持ちで突っ走ってきた。頂点まで登りつめたつもりでいたけど……。

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