【第二話】 とこやさんの魔法

 お風呂の余韻の残る火照った身体が心地良く、母のシャンプーの香りがふかふかの布団と共に私を包み込む。気がすむまで想像し終えると、一気に睡魔の波が押し寄せるのがお決まりのパターンだ。 私がまぶたを閉じかけると、家の外の電灯は徐々に消えていく。どこかの遊園地のあかりも消え、観覧車もメリーゴーランドも陽気な音と共にゆっくりと動きが止まってしまう。海外の賑やかな街(今思うと、それはいつかテレビで見たラスベガスだったのかもしれない)の車も次第に停まり、街の電気もどんどん消えていく。そうして隣で寝かしつけてくれている母も、さっきまでテレビを見ていた姉も、そういえばまだ仕事から帰ってこない父も、誰もが眠りにつきはじめ、世界中の全てのあかりというあかりが一気に消えて真っ暗な夜になったところで、最後にエジプトのラクダまでもが眠りに落ちる …というところを想像しながら、幼い私はまぶたを閉じた。 これを想像だと疑ったことは一度もなかった。 あの頃の私には、想像の世界が手を伸ばすと届きそうなくらい、身近な場所にあった。

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